Obj型

F#には、全てのクラスにとっての親クラスにあたる obj型という型が存在し、 obj型は、.Net FrameworkのSystem.Object型の省略形になります。 親クラスは、子クラスの機能を全て持っているため 全ての型は安全にobj型に変換(コアーション)することが出来ます。
コアーションとそれに類した操作
:>とupcast //static coercion expression(F# 4.1 spec 6.7.2) :? //dynamic type-test expression(F# 4.1 spec 6.7.3) :?>とdowncast //dynamic coercion expression(F# 4.1 spec 6.7.4)
ある型をその親クラスの型に変換することを、アップキャスト(upcast)と言い ある型をその子クラスの型に変換することを、ダウンキャスト(downcast)と言います。 一般的に、 アップキャストは安全(大は小を兼ねる)で ダウンキャストは危険(小は大を兼ねないので)だと言われます 普通の数値型なども obj型に安全にアップキャストすることが出来ます。
obj型へのアップキャスト
> let a = 1 :> obj;;
val a : obj = 1
> let b = (upcast 1 : obj);;
val b : obj = 1
> let c = "abc" :> obj;;
val c : obj = "abc"
> let d = (upcast "abc" : obj);;
val d : obj = "abc"
obj型へのコア-ションは box演算子(box operator F# 4.1 spec 18.2.6)によっても実現できます。 これは、渡されたものをオブジェクト表現(object representation)に変換する演算子です。
box演算子
> let a = box 1;;
val a : obj
> let b = box "abc";;
val b : obj
また、これとは逆の演算子としてunbox演算子(unbox operator F# 4.1 spec 18.2.6)があります これは、互換性のない型に戻すと例外が発生してしまうため 気をつけて使用しなければなりません。
unbox演算子
> let a = box 1;;
val a : obj = 1

> let b = unbox<int> a;;
val b : int = 1

> let c = unbox<string> a;;
System.InvalidCastException: 型 'System.Int32' のオブジェクトを型 'System.String
' にキャストできません。
   場所 <StartupCode$FSI_0013>.$FSI_0013.main@()
Stopped due to error
そのため、通常は:?(Dynamic Type-Test Expressions)を用いて 変換が出来るかを判定してからダウンキャストを行います
Dynamic Type-Test Expressionsの利用
let a = box 1 in
let b = box "abc" in
let check (x:obj) =
	match x with
	| :? int -> System.Console.WriteLine "int"
	| :? string -> System.Console.WriteLine "string"
	| _ -> System.Console.WriteLine "other type" in
check a;check b;;
Dynamic Type-Test Expressionsは関数のようにもつかえます。 ( obj :? type )のように使用すると、objがtypeに変換可能なときはtrue それ以外ならfalseを返します
Dynamic Type-Test Expressionsの利用その2
> let a = box 1 in if (a :? int) then true else false;;
val it : bool = true
boxやunboxはオブジェクト変換演算子(Object Transformation Operators)と呼ばれ この仲間としては 基礎編で出てきたrefと!の他、 hash/sizeof/typedefofを合わせて全8種類あります。 最後に、F#の基本的な型がどういう親クラスを持つかについては 付録にまとめてあります。